2010 Fiscal Year Annual Research Report
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20530733
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
小池 源吾 広島大学, 大学院・教育学研究科, 教授 (00178170)
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Keywords | 大学拡張 / ドイツ歴史学派 / 福音主義運動 / 新学派経済学 / 古典派経済学 / レッセ・フェール批判 / 共同する社会 / 民衆の教育 |
Research Abstract |
今年度の研究では、キー・パーソンとしてアダムズ、ジェームズ、イリーの3人に着目し、彼らが大学拡張に挺身していく過程を究明することによって、初期大学拡張運動の思想的特徴を明らかにした。 (1)彼らは、いずれもドイツ大学への留学経験をもつ。ドイツ歴史学派の洗礼を受け、実証的な研究法のみならず、学問および学者の社会的使命に覚醒した。また、ビスマルクのドイツで、国家の国民生活に果たす積極的役割を目の当たりにした影響も看過できない。 (2)往時、アメリカでは社会進化論が説く「自然淘汰」、「適者生存」が席巻し、持てる者と持たざる者との格差は拡大の一途を辿っていた。レッセフェールを擁護する古典派経済学を批判し、ひたすら社会改革に努力を傾注したのは、学者としての使命感によるところ大であった。 (3)だが、彼らが理想とする社会像は、ビスマルクのドイツでも、社会主義国家とも一線を画した。彼らが理想とする社会とは、社会的福音が説くキリスト教的博愛にもとづく社会、「共同する社会」にほかならなかった。その建設には、民衆の教育が不可欠とみなされた。つまり、社会共同主義の立場から民衆の教育を、ひいては理想の社会を実現するための有効な方途を、彼らは大学拡張に見出していたことになる。
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Research Products
(2 results)