2010 Fiscal Year Annual Research Report
「教育困難高校」の課題と支援のあり方-生徒の実態調査とその要因分析から-
Project/Area Number |
20530759
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Research Institution | Joshibi University of Art and Design Junior College |
Principal Investigator |
山田 朋子 女子美術大学, 短期大学部・教職課程, 教授 (50331418)
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Keywords | 教育困難校 / 高校教育論 / 教育改革 / 学校経営 / 教育制度 / 学校支援 |
Research Abstract |
今年度の研究は、以下のように実施した。 まず国内での過去の調査結果のまとめを行った。その分析の中で、特に注目されたのは保護者の状況である。経済面の困難だけでなく、例えば、保護者自身が軽度知的障害や発達障害を持ちながら見過ごされてきたことで適切な子育てができない、あるいは正社員として長期間の就業ができないことが子どもに大きく影響する場合など、周囲の支援が必要な事例、家庭内の問題に学校が関与せざるを得ない実態とその限界も述べられた。このような場合、学校や行政の支援範囲の限界、教師が限界以上に対応せざるを得ない現実など、複雑な実態が明かである。その一方、「努力」している生徒の実態も述べられた。本研究では、家庭の経済力や家庭環境と、生徒の学力や努力できる意識の関係性を踏まえ、生徒の状況の責任を、本人や家庭だけに求めることは適切ではないとする方向性での調査を行ってきた。しかし、聞き取り調査などで教員から強く述べられたのは、「努力」している生徒の実態である。それによれば、経済力が低く家庭環境が厳しい中でも努力している生徒がいること、そういった実態を考えれば低学力や問題行動をする生徒の今置かれた現状は本人の責任も重いとされる。 他方、米国では公立ミドルスクールやエレメンタリースクール、私立学校での調査も実施した。米国では希望者が無試験全入できることから、地域公立ハイスクールの位置づけは、エレメンタリー、ミドルスクールから継続する学校といえる。そこで、子どもに対する支援策として、各学校段階の状況を調査することで、継続した支援のあり方や必要性の意義を考察した。また、高額の納付金が必要な私立学校において低所得層の希望者に入学のチャンスを与える支援がなされていることも「努力」している生徒への支援方法として興味深い。今後の日本における「努力を活かせるチャンスの保障」の観点から研究課題として継続したい。 以上の研究活動に加え、これまでの成果を「平成22年度総合学科高校関東地区大会」講演会にて発表し、研究報告として紀要論文に掲載している。
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