2008 Fiscal Year Annual Research Report
在日中国人の子どもを取り巻く教育環境に関する調査研究
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20530763
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
周 飛帆 Chiba University, 言語教育センター, 准教授 (80270867)
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Keywords | 家庭教育 / 中国人移住家庭 / 教育志向と教育戦略 |
Research Abstract |
一般の家庭に比べると、異なる文化を背景に持つ家庭は、どちらの文化を基準にして教育を行うかという点において、選択が迫られることが多い。先行研究では、そうした家庭の教育戦略に影響するものとして、親の教育志向、親子関係などの要因が指摘され、調査・研究されている。しかし、先行研究の中には、家庭における教育の目標形成、実施などの一連の要因を固定的にとらえるところに問題があると考える。果たして一度決めた家族の教育方針は変わらないものなのか、またもし変わるものとした場合、どのような要因がそれに影響するか。本研究は、在日中国人の家族に対する調査を行うことで、このような課題の究明を目的としている。 家族の教育戦略の変化を解明するには、長期間にわたる調査が必要とするため、今年度は、調査対象の選定と予備調査を実施した。具体的には首都圏に住む中国人の親子に対し、定期的にインタビュー調査し、実態と諸要因との関係を調査した。 現段階として以下の結論にいたった。(1)日本の学校教育の基本理念に対し、ほとんどの中国人家族は否定する意見を持っていない。(2)一方、学業、体育活動、部活動、子どもの個性や集団関係に関して、中国の教育観に基づく意識が見られ、それが日本の学校教育に対する不満として表れる。(3)だが、家庭における教育方針は、親から子への一方通行でなく、子どもの適応状況によってかなり大きく変わることがある。(4)その際の影響要因として、a親の教育観、収入、社会的ネットワーク、情報収集能力と分析能力(家庭の資源的要因)、b夫婦、親子の家族関係(家族の意思決定要因)、C家族と日本社会との距離や関係(資源獲得の可能性)、d中国で動員可能な人的、社会的、経済的資涼(危機回避的要因)によって影響されると考えられる。 次年度以降、そうした要因の相関関係などについて、質的、量的調査を通して解明していきたい。
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