2008 Fiscal Year Annual Research Report
バカロレアに学ぶ伝統継承と市民の育成-通過儀礼としてのフランス大学入学資格試験-
Project/Area Number |
20530770
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
渡邉 雅子 Nagoya University, 大学院・教育発達科学研究科, 准教授 (20312209)
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Keywords | 思考表現法 / フランス / 大学入試 / 哲学教育 / 通過儀礼 / 能力観 |
Research Abstract |
20年度は2回の現地調査を行い、普通バカロレア試験の内容と評価制度、訓練法の概要を明らかにした。まず普通バカロレアの試験はすべて論述と口答試験で行われ、論述は、すべての教科を通じてサンテーズと呼ばれる弁証法で書くことが期待されていること、よって準備教育は、与えられたテーマで実際に書きながら、教師による個々の学生の論文添削が中心になることが明らかになった。評価方法は、教科によって若干の違いはあるものの、基本的に構成(plan)、知識(connaissances)、内容(document)、結論(conclusion)、綴り字・文法(orthograph)の5項目で合計20点満点で評価され、中でも論理展開を表現し、かつ弁証法の構造で書かれているかを確認できる「構成」が大きな比重を占めることがわかった。フランスでは弁証法の習得(その思考法と表現法)が、高等教育へ進めるか否かの鍵になることが確認出来た。論述試験でも、項目の明確さと何より弁証法の「型」があることにより採点者によるぶれは極力抑えられるとのことである。フランス語教師によれば、この他、文学(フランス語)の試験においてはテキスト解釈(explication de text)とコメント(commentaire)の書き方があり、こちらもフランス独特の思考と表現法を示しているが、基本は弁証法であり前者2つはその応用と考えられている。 バカロレアで最も重要視される哲学の論文では、弁証法を基本としながらも、「問い」を立て、その答えを多面的に検証する問題提起(problematique)を個々の学生が作ることが求められる。さらにいかに良い考えがあっても、それをバックアップする古典や著名な作家の引用の暗記が出来ていなければ論文は書けない。バカロレアでは「過去」の材料を使いつつ、独自の論理展開を行う能力が測られるのである。
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Research Products
(1 results)