2010 Fiscal Year Annual Research Report
「歴史情報教育」としての歴史学習環境の構築と指導法の開発
Project/Area Number |
20530825
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
吉川 幸男 山口大学, 教育学部, 教授 (40220610)
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Keywords | 歴史学習 / 歴史授業構成 / 歴史教材研究 |
Research Abstract |
平成22年度は3年次にわたる本研究の最終年であり、きわめて具体的なレベルでの成果をまとめるとともに、次期研究の重要な足がかりを得た。実施した研究内容は以下の2つである。 1)歴史学習における「問い」成立とその後の展開を、歴史学研究の過程と、小学校中学年における歴史的学習の過程から帰納することにより、一定のモデル化を試みた。前者には歴史学研究を専攻する大学院生の協力を得て、歴史学研究者が研究を始める「問い」の成立と、その「問い」がさらに深化発展してゆく過程をたどり、一般的な歴史探究過程における「問い」の位置を明らかにした。後者には初等社会科教育を専攻する大学院生の協力を得て、子どもの最も初期の「過去への問い」を立てた学習の過程をたどり、中等教育のように所与の学習内容が前提にされない、学習者の関心に立脚した「問い」の成立と発展過程を明らかにした。 2)教師が教材研究過程において歴史情報をどのように取扱って学習者の歴史学習環境を構成しているか、そこにどのような方策の可能性があり得るかを、実施授業における子どもの発言の収集、教師の教材研究過程の追跡を通して明らかにすることを試みた。具体的には附属中学校教諭の協力を得て歴史授業づくりに向けた問いの設定段階を取り上げ、発問構成に至るまでの実際的な過程に即し、その過程のどの局面で教師はどのような判断を重ねていったかという、判断局面の分析を行った。このことの歴史教育論的意味は大きく、「歴史の問い」を「どの立場からどの方向に向けて発するか」など「問う者の位置」と視点の構造に関わる問題、そこにおける教師のポジショナリティ(立ち位置)の問題が関連し、次期の研究に向けた課題を派生させた。
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Research Products
(2 results)