Research Abstract |
郷土人物教材として,これまで開発してきた田中角栄,北一輝,川村修就に加えて,涌井藤四郎,良寛,山際七司などに関する教材開発を進めてきた。今年度は特に「社会参加」という鍵概念に基づいて,人物の生き方と社会の課題の関係性について生徒に考えさせるための方法論研究を行った。それは,開発してきた郷土人物を,3つのカテゴリーに分類して,人物の生き方と社会の課題との関係について生徒に考えさせるというものである。 第一は「実践的社会参加」というべきものであり,町政改革に取り組んだ涌井藤四郎や,通商貿易を幕府に説いた川村修就,中山間部の生活格差是正に具体的に取り組んだ田中角栄などの人物教材が,このカテゴリーに属する。 第二は「理論的社会参加」というべきものであり,自由民権運動の理論的指導者である山際七司や,内政・外交にわたる日本の国政改革を説いた北一輝などが,このカテゴリーに属する。 第三は「精神的社会参加」というべきものであり,世俗的な功績はないが,後世の人々がその人の生き方を参考にするような人々の間接的な社会参加ととらえられ,良寛などが,このカテゴリーに属する。 3つのカテゴリーは,今日,地方の課題を考えさせる上で重要な,限界集落などに見られる格差の解決という実践的な課題,地方の自立や地域主権に関する理論的構想の必要性,人々の精神的つながりや豊かさの問題などに対応し,歴史的に取り組んだ人々の事例は,優れた学習材となる可能性に満ちている。以上のフレームワークに関する本年の研究成果は,第58回全国社会科教育学会全国研究大会(於弘前大学)のシンポジウムにおいて報告し,一定の評価を得ることができた。
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