2008 Fiscal Year Annual Research Report
「読解力」を育成する小中学校歴史カリキュラムの開発研究
Project/Area Number |
20530844
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
岡崎 誠司 University of Toyama, 人間発達科学部, 教授 (30401798)
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Keywords | 教科教育学 / 社会科 / 読解力 / 歴史学習 / カリキュラム |
Research Abstract |
PISA読解力調査結果より「テキストの解釈、熟考・評価に課題がある」ことが明らかになったが、果たして、社会科授業は子どもに、解釈し熟考・評価する技能・能力を育成するものになっているか。 小学校歴史学習は、「子どもが時代を解釈し、評価する能力の育成」をめざすべきである。なぜなら、社会認識教育の一環としての歴史学習は、「子どもが現代社会を理解し、現代の社会システムをより良いものへと改善することのできる能力」を育成することに貢献するべきものだと考えるからである。平成20年度は、公開授業研究会を実施している研究校を訪問し、授業を直接観察・記録した。訪問校は、第46回全国小学校社会科研究協議会研究大会の会場校(公立小学校)1校と国立大学附属小学校4校である。参観授業は2つに類型化できる。1つは、理解型授業で、歴史上の人物の行為に対して子どもが共感的に理解することをめざすものである。もう1つは、習得・活用・探究型授業である。この型の授業は、平成20年3月に告示された学習指導要領の理念および同年1月に明らかにされた中央教育審議会答申の理念を具現化しようと、習得・活用・探究を授業構成原理とするものである。両型の授業は、あるべき小学校歴史学習にはなり得ていないし、めざしてもいない。一方、訪問した中学校1校では、リテラシー型といえる授業を実践していた。この型の授業は、テキストからの読み取り、解釈を意図するものである。ただし、訪問校は、国立大学附属校であり、文部科学省研究開発学校としてリテラシーの育成をテーマとして数年かけて研究を推進してきていた。したがって、参観授業が、中学校で実践されている典型的な授業とはいえないだろう。平成20年度に参観した小中学校授業では、「子どもが時代を解釈し、評価する能力の育成」をめざす授業はなかった。 また、中央教育審議会答申で示された学力を意識した研究発表はあったが、実際の授業では、「観点別に評価される学力」のままであった。PISA型読解力は、「総合学力」であって、これまでの学力観を転換する必要性を提起している。授業開発を通して、その具体的な提起が求められている。
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