2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20530851
|
Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
根津 知佳子 Mie University, 教育学部, 准教授 (40335112)
|
Keywords | 感性 / 音楽的経験 / 対話 / 場 / 臨床の知 / フレームワーク / 共感 / Kansei |
Research Abstract |
感性工学領域では、人間のひとつの機能(function)としての感性を抽出し、人工的な感性を創出することで、より人間に近い工学の実現を目指している。実践においては、対象者が「感受したコト」を音声・文字・数値・絵・音などの「形式的なモノ」に変換するプロセスが重要である。とりわけ、教育実践は、実践者と対象者の言語的行為・非言語的行為が複合して展開される営みであるため、形式知から暗黙知への変換(破線)をも含めた双方向性が重要となる。そこで、筆者らが考案したフレームワーク(三重大学COE(B),2005)を用いて、暗黙知から形式知への変換をいかにうながすか、そしてそれを暗黙知とどのように連結させるかなど、ベクトルの移動の過程を示すことができることを検証した。本研究では、感性工学や感性哲学の近年の先行研究を基盤とし、“音楽的経験"における感性について「履歴を持つ空間で身体の配置を捉える能力」と規定した。そして、Keneth.E.Bruscia(1998)に依拠し、音楽的経験・前音楽的経験・外音楽的経験・準音楽的経験・非音楽的経験の5つに分類し、感性を育む場についてモデル化した。さらに、平成13年から20年までに実施したWilliams Syndromeの患児・家族を対象とした芸術プログラムと米国、アイルランドの比較を行い、中村雄二郎の言及する“コスモロジー"“シンボリズム"“パフォーマンス"の視座だけではなく、Williams Syndromeの遺伝子情報からのアプローチを行い、日本芸術療法学会で報告した。 また、Williams Syndrome(ウィリアムズ症候群)の患児と家族のための“芸術プログラム"を教員養成型PBL教育の教育モデル(総合型)として確立した。プログラム開発において重視していることは、(1)子どもとその家族全員が参加する(2)音楽、美術などの多領域を融合したプログラムにする(3)医学・福祉・心理などの近接関連領域との連携を図る、の3点であり、活動や教材を開発する、という視点に立てば、A-II型、B-II型に属するが、対象者のニーズを理解し、問題解決をするという視点では、A-I、B-II型に属する総合的なPBL教育といえる。
|