2010 Fiscal Year Annual Research Report
バイオマーカーを用いた病弱児におけるストレス評価に関する研究
Project/Area Number |
20530875
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
竹田 一則 筑波大学, 大学院・人間総合科学研究科, 教授 (90261768)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山口 昌樹 岩手大学, 工学部, 教授 (50272638)
福島 敬 筑波大学, 大学院・人間総合科学研究科, 講師 (30323299)
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Keywords | 小児がん / 唾液バイオマーカー / ストレス / 医療処置 / 唾液アミラーゼ活性値 / distress |
Research Abstract |
本年度は,入院中の小児がん患児における骨髄穿刺や腰椎穿刺などの侵襲的な医療処置に際して観察される唾液アミラーゼ活性値および心拍数と,患児の示すdistress行動との関連を明らかにすることを中心的な目的として検討を行った。 その結果,以下の1,2が明らかになった。 1.医療スタッフが評価した医療処置に対する身体的苦痛の程度(VASスコア)の高低と,医療処置直後の患児の唾液アミラーゼ活性値や心拍数の間には有意な関連性が認められた。このことから,医療従事者から見た,患児における痛みなどの身体的ストレスの評価においては,唾液アミラーゼ活性値を評価指標として用いることの妥当性が示された。 2.観察者によるOSBDを用いたdistress行動の評価と唾液アミラーゼ活性値および心拍数の関連について,OSBDスコアの高値群(distress行動を多く示した群)と低値群における唾液アミラーゼ活性値および心拍数の差異を調査した結果,OSBD高値群の心拍数はいずれのphaseにおいてもOSBD低値群と比較して有意に高値であった。これは,OSBD高値群に多く含まれる学齢期以前の幼児は音声や身体を用いて積極的にdistressを表現する場合が多く,こうした表現方法は交感神経系の活動高進を介して心拍数を増加させるとともに,distress行動のスコアも上昇させること,年少児はもともと心拍数が高いことなどによるものと推測される。その一方で,OSBDの高低と唾液アミラーゼ活性値との間には関連性は認められなかった。このことから,行動観察によるdistressの程度が唾液アミラーゼ活性値を指標とした場合の評価と必ずしも一致しないことが推測された。特に,自身の行動をある程度コントロールできるようになる学齢期以降の患児においては行動観察だけでは必ずしも患児のストレスを把握しきれない可能性が考えられ,学齢期の児童や生徒を対象とする病弱教育においてはバイオマーカーなど生理学的指標も用いて患児のストレスにアプローチする必要性が新たに示された。
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