2010 Fiscal Year Annual Research Report
手話環境下の人工内耳装用児の聴覚情報処理を促進するための教育支援プログラムの開発
Project/Area Number |
20530891
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
高橋 信雄 愛媛大学, 教育学部, 教授 (70132719)
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Keywords | 人工内耳 / 聴覚障害幼児 / 特別支援教育 / 教育支援プログラム / 手話 / リハビリテーション |
Research Abstract |
1、手話環境下における人工内耳装用乳幼児では、初期の母子コミュニケーションの成立が聴覚利用と大きく関連していることが推察された。手指を含むコミュニケーションが成立している場合、人工内耳装用乳幼児の聴覚発達は、興味関心を誘う楽しさを基盤とした相互コミュニケーション活動を通して拡がっていくことが観察された。(1)初期の母子コミュニケーションがいずれかのモードで確立できている場合には、その後の経過は以下のようであった。a)早期に指文字等で音韻を意識させた幼児の場合、音と結合して表出語彙は増大していくが、意味概念の広がりが十分でなかった。一方、b)同じ手話環境下になっても、音韻そのものよりは、韻律情報を主体として聴覚を活用した幼児の場合、音声コミュニケーションがより活発化し、構音,も明瞭になっていった。3年間でほぼ年齢相応の言語力に到達できる場合もあることがわかった。(2)これに対し、初期の母子コミュニケーションが、十分に確立できていない場合には、手指のコミュニケーションの導入を先行したものの、音声言語の発達は緩慢であった。3歳以上では、ろう学校の連日の指導プログラムでの介入を行い、平行して、文字による確認により日本語の形態を再認知させる言語指導プログラムを試み、人工内耳埋込4年後には音声コミュニケーションが可能となったが、日本語の文構造や助詞の使用に課題を残した。 2、人工内耳以前の難聴発見初期の母子コミュニケーションの成立が大前提となる。手話環境下にあっても、相互コミュニケーションが確立していれば、人工内耳を通して、聴覚の経路が開かれていくことから、聴覚活用を動機づける教育プログラムをろう学校を含む介入機関全体で統合的、有機的に実施する必要性が認められた。今後、人工内耳装用児の聴覚情報処理を進めるためには、機関間の連携を中止とした教育プログラムの実施に向けた検討を要する。
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