2008 Fiscal Year Annual Research Report
日本鉄道業の発展と国際環境-鉄道資材調達を中心として-
Project/Area Number |
20539001
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Research Category |
Grant-in-Aid for Special Purposes
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中村 尚史 The University of Tokyo, 社会科学研究科, 准教授 (60262086)
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Keywords | 近代日本 / 鉄道業 / 国際環境 / 鉄道資材貿易 / 国際競争 / 機関車製造業 / 第一次グローバル化 / 世界市場 |
Research Abstract |
本研究の目的は、近代日本における鉄道業の急速な発展の要因を、19-20世紀転換期の国際環境の影響という視点から再検討することにある。日本における鉄道業の形成を考える場合、その再生産を可能にする鉄道資材の供給が、誰によって、如何にして行われたのかという問題を考慮することが不可欠である。とくに機関車やレールの完全な自給が難しかった明治期において、この課題は鉄道資材の円滑な輸入がなぜ可能になったのかという問いに置き換えることが出来る。本年度はこのような問いに答える第一歩として、当該期における激しい機関車製造業の国際競争に着目し、日本鉄道業の発展を可能にした国際環境を概観した。具体的には、日欧外交文書や政府・議会文書、内外の技術雑誌、各種貿易統計といった資料群を活用しながら、世紀転換期における機関車製造業の産業構造と主要市場の変化を検討した。 その結果、イギリス、アメリカの主要な機関車メーカーにとって、1880年代から1890年代前半にかけて南米市場が、また1900年代にはインドを中心とするイギリス植民地市場が、主要な製品市場であったことが判明した。そしてその端境期である1890年代後半に、一時的に日本を中心とするアジア市場が、機関車国際競争の主要な舞台になった。当該期は日本各地で多くの鉄道企業が勃興し、鉄道業の急激な発展がみられた時期である。機関車世界市場をめぐる国際競争の激化が、機関車の価格低下、納期短縮、品質向上といった鉄道会社に有利な環境を生み出し、鉄道熱の一つの背景となったのではないか。19-20世紀転換期が第一次グローバル化の時代であったことを考えれば、この仮説は十分に検討に値する。来年度以降は、このような視点から日本鉄道業発展の国際的契機を探っていきたい。
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Remarks |
基盤C
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Research Products
(2 results)