2009 Fiscal Year Annual Research Report
日本鉄道業の発展と国際環境―鉄道資材調達を中心として―
Project/Area Number |
20539001
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中村 尚史 The University of Tokyo, 社会科学研究所, 准教授 (60262086)
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Keywords | 近代日本 / 鉄道業 / 国際環境 / 鉄道資材取引 / 国際競争 / 機関車メーカー / 商社 / 鉄道企業 |
Research Abstract |
本研究の目的は、近代日本における鉄道業の再生産構造を、19-20世紀転換期の国際環境をふまえて再検討することにある。具体的には、世紀転換期における鉄道資材の世界市場の状況を把握した上で、欧米の鉄道資材メーカー、内外の貿易商社、国内鉄道企業、各国政府関係者という複数のプレーヤーの動向に注目しつつ、日本鉄道業の急速な拡大を支えた資材調達のメカニズムを明らかにする。2年目である本年度は、イギリスにおける史料調査を重点的に行い、(1)イギリス機関車メーカー、商社、鉄道企業といった諸経済主体が、鉄道資材取引にどのように関与していたか、(2)世紀転換期におけるイギリス機関車工業の世界市場における相対的地位低下とイギリス政府の対応、という2つの問題を考えた。 このうち(1)に関しては、North British LocomotiveやBeyer Peacock、Vulcan Foundryといったイギリスの有力機関車メーカーのOrder Bookを分析し、各社がどのような日本鉄道企業から、誰の仲介で、如何なる条件(仕様、納期、価格等)で発注を受けていたのかを分析した。その結果、仕様決定の過程における官営鉄道の役割の重要性や、納期の厳しさ、仲介業者の外国商社から日本商社への変化などが明らかになった。また(2)については、イギリス国立公文書館(PRO)が所蔵する外交文書(FOシリーズ)や、技術専門誌(The Engineer)の分析を通して、日本の鉄道技術の自立にともなうイギリス人顧問技師の解雇や、入札制度の導入によって、日本市場に対するイギリスの影響力が1890年代を通して漸減し、それに代わってアメリカ・メーカーが急速に台頭してくる過程が明らかになった。イギリス政府は、イギリス・メーカーの指名競争入札への参加を日本政府に働きかけるなど、自国鉄道資材工業の地位回復に努めるが、イギリス・メーカーと米・独メーカーとの技術格差や納期・価格面での競争力不足の問題もあり、イギリスの凋落を止めることはできなかった。
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Research Products
(4 results)