Research Abstract |
本研究では、3次元空間での活動に必要不可欠な奥行きの知覚について,"perception(知覚応答)"と"action(運動応答)"という場面の違いによる、単眼視でも得られる単眼奥行き手がかりと、両眼視によって得られる両眼奥行き手がかりの重み付けの違いを,中央大学の山口真美教授ほか,多くの研究者の協力を仰ぎ,乳児を対象とした発達研究により検討している。 本年度は,"action"に関する実験として,運動刺激観察時の乳児の姿勢の動揺を調べる実験を行ない,国際学会で発表し,英語論文を投稿した。実験結果から,姿勢の動揺という"action"において,注視点よりも背景の運動の影響が大きい,"perception"とは異なる情報処理経路が示唆された.背景は通常は奥にあり,この点で乳児でも成人と同様の傾向が示されたと言える.この研究は豊橋科学技術大学の北崎准教授,九州工業大学の花澤准教授の助言を仰いだ. また,ミネソタ大学のヨナス教授らと協力し,複数の実験を進めている.この一連の研究により,ヨナス教授が行なってきたリーチングという"action"と,"perception"における奥行き知覚との比較ができる.実験はミネソタ大学と中央大学の両方で実施し,学会での打ち合せ他,研究代表者がミネソタ大学を訪れ,密接に情報を共有している.研究成果は国際学会で発表し,英語論文を1本発表し,さらに1本を投稿中である. 両眼手がかりを用いた奥行き知覚については,東京工業大学の金子寛彦准教授に協力をあおぎ,実験を行ない,学会発表を行なった. さらに,乳児が刺激が垂直かを知覚する際に,垂直の基準である参照枠として刺激周囲の四角を用いるかを検討した英語論文を2本発表した。周囲の四角を参照枠として利用することは,環境の情報の利用に関係すると言え,実空間での活動において重要な能力である.
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