2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20540004
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
中村 哲男 Waseda University, 理工学術院, 教授 (90016147)
|
Keywords | 楕円曲線 / 虚数乗法 / アーベル曲面 / トーション |
Research Abstract |
虚数乗法をもつ楕円曲線は虚2次体の類体の構成に決定的役割を果たすというのが古典的類体論である。その類体は楕円曲線のトーション(位数有限の点)によって生成されるのである。一方有理数体上定義された楕円曲線のトーション(有理点であるもの)の素数位数は高々7である。(メイザーの定理)特に虚数乗法をもつ楕円曲線に限ると3以下の素数位数しか現われない。 今年度の研究では有理数体上定義されたアーベル曲面(2次元アーベル多様体)でCM型(虚数乗法タイプ)であるものを考察し論文としてまとめた。その概要を述べる。以後アーベル曲面はすべて有理数体上定義されCM型とする。まずアーベル曲面が絶対単純であるときは、立教大学の青木氏によりトーションの素数位数は高々5であることが示されている。アーベル曲面が絶対単純でないとき、それは2つの虚数乗法をもつ楕円曲線の直積に同種であることが示される。さらにアーベル曲面が有理数体上単純でないとき、トーションの素数位数は3以下になることが分かる。アーベル曲面が有理数体上単純であるときは、前年度の研究によりトーションの素数位数は高々7であることが分かる。これらの結果は虚数乗法をもつ楕円曲線の定義体上の有理トーションが小さい位数をもつという事実が大きく影響している。 今年度は前年度の研究の問題点を修正して学術論文として専門誌Journal of Number Theory(Elesvier Inc.)に投稿した。 今後の研究では、CM型ではないアーベル曲面で楕円曲線の直積に同種である場合について、その有理トーション群を解明することが重要になった。
|