2010 Fiscal Year Annual Research Report
多変数保型形式と多変数超幾何函数に内在する数論的関係
Project/Area Number |
20540007
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
志賀 弘典 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (90009605)
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Keywords | Hypergeometric Function / Picard modular form / Shimura variety / Abelin variety |
Research Abstract |
本プロジェクトは、多変数超幾何函数と多変数保型形式の関係を通じて、その数論的な意味を解明することを目的としていた。 このような研究計画の背景には、19世紀における楕円函数論、ガウス超幾何函数の理論、虚数乗法論が一体となって発展したことを踏まえて、今日の代数幾何学、多様体論、微分方程式論を駆使して、上記の古典理論の拡大版を目指すという意図があり、本年度は、発表論文リストにある3つの結果を得た。これらも、前述の計画の中に位置づけられるものである。 第一は、遠く19世紀のピカールに遡る2変数保型形式を用いて、ヤコビによる楕円積分とテータ函数との入れ子状の奇妙な公式が2変数の世界でも成立することを示した。 第2は、第1のものと異なるピカール型保型形式を用いると、同様のヤコビ型公式が得られ、この場合には、古典的なガウスによる算術幾何平均定理の完全な2変数化を導くものであることが明らかにされた、 第3は、2変数のアッペルの超幾何微分方程式を特別な超平面に制限すると、一般には複雑な定義式で与えられる志村曲線が、判別式6の場合に限ってであるが、簡単な定義式で与えられ、同時に対応するアーベル多様体(アーベル曲面)も可約な3次元アーベル多様体の既約成分として明瞭に指示しうることを明らかにした。 今後は、2次元カラビ・ヤウ多様体(すなわちK3曲面)の周期写像によって導かれる保型形式の立場から同様の現象を追求してゆきたい。
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