2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20540042
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中山 昇 京都大学, 数理解析研究所, 准教授 (10189079)
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Keywords | 代数学 / 代数幾何学 / 代数多様体 / 自己正則写像 |
Research Abstract |
本年度は,「同型でない全射自己正則写像を有する正規射影的代数曲面の分類」についての論文と,「普遍被覆空間がアフィン空間となるコンパクトケーラー多様体」についての論文の二つを書き上げることを予定していた.はじめの論文に関する研究で少し進展があったが,あとの論文については何も進展がなかった.はじめの論文の研究内容で既に得られていることの概略と今回進展があった内容を説明する. 同型でない全射自己正則写像を有する正規射影的代数曲面は,ある例外のクラスをのぞき,ある6種類の典型的な曲面を,余次元1で不分岐な有限次ガロア被覆に持つことで特徴付けられる.この結果は曲面の分類論,とくにその対数的極小モデル理論と,いくつかの力学系の概念を元にして得られる.例外のクラスは有理曲面であり,自己正則写像が定める特殊な境界因子に対しては,対数的にデルペッツォ型になっている,さらにピカール数が3以上のものは,交点数が負となる曲線の情報により,2つの場合に分かれるが,その内の一つは概トーリック曲面という,ショクロフの判定法を弱くして定義されるトーリック曲面の類似物になる.この概トーリック曲面は,トーリック曲面からブローアップとブローダウンによるある単純な操作で構成できることがわかっていたが,今回は概トーリック曲面がある特殊な二本の曲線を持つことがわかり,これにより上記のブローアップとブローダウンによる曲面の構成に標準的なものがあることがわかった.この結果だけでは,概トーリック曲面がいつ同型でない全射自己同型写像をもつか否かは決定できないが,構造解明の鍵の一つになるのかもしれない.
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