2011 Fiscal Year Annual Research Report
ゲージ理論的手法によるアインシュタイン計量及びリッチフローの研究
Project/Area Number |
20540090
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
石田 政司 上智大学, 理工学部, 准教授 (50349023)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
都築 正男 上智大学, 理工学部, 准教授 (80296946)
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Keywords | リッチフロー / アインシュタイン計量 / ゲージ理論 |
Research Abstract |
本研究課題の研究計画は大きく次の2点に分けられる。 (1)4次元多様体上のアインシュタイン計量およびリッチフローの時間大域解の存在、非存在問題に対し、Seiberg--Witten方程式に付随する様々なゲージ理論的不変量を応用するアプローチを取る。特に、4次元多様体上にアインシュタイン計量及び、リッチフローの時間大域解が存在するとき、その4次元多様体に幾何学的にどのような制限がつくのかを、ゲージ理論的不変量を応用することで調べる。 (2)Seiberg-Witten方程式に付随するゲージ理論的不変量の構成に関するホモトピー論的、代数幾何学的基礎付けに関して研究する。 研究計画(1)については、これまでの研究をもとに、リッチフローの時間大域解の一つである非特異解をもたない4次元多様体の新しい例を構成した。これはある意味でトポロジーが小さい4次元多様体であり、それ自身、興味深い性質を持っている。これについては現在、論文を準備中である。さらに本年度は、リッチフローの特異点解析で基本的な手法となっているペレルマンの非局所崩壊定理をはじめとする一連の結果を深く学び直し、さらにそれらの結果をリッチフローのある種の拡張版に拡張することも試みた。具体的には調和写像とリッチフローを組み合わせた新しいフローに対するペレルマン汎関数の類似物を、従来とは違ったより統一的な視点から導き出す機構を見出すことができたので、この方向でも興味深い結果を得つつある。これについても近い将来、論文を準備する予定である。 研究計画(2)については、残念ながら、特筆すべき成果を得ることができなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実績の概要の欄に記載した(1)および(2)に分けて述べる。研究課題(1)については、体積エントロピー項つきHitchin-Thorpe不等式を満たすにも関わらず、アインシュタイン計量を持ちえない4次元多様体の存在を証明することができ、さらに非特異解をもたない4次元多様体の新しい例を構成するなど、当初の計画以上に進展していると言ってよい。しかしながら研究課題(2)については未だ予定していた研究計画の最初のステップもクリアできないでいる。これは研究課題(2)が本質的に代数幾何学の問題であることにより、研究代表者の理解が浅いことに起因している。以上のように研究課題(1)については非常によく進展しているが、研究課題(2)については進展が非常に遅れている。全体として、やや遅れていると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
アインシュタイン計量及びリッチフローに関する研究課題(1)については、ほぼ満足のいく形で研究が進展している。これまで通りの研究姿勢を貫き、さらなる研究成果を上げたい。一方、ゲージ理論的不変量の構成に関するホモトピー論的、代数幾何学的基礎付けに関する研究課題(2)については、あと1年間の研究期間しか残されていないことを鑑み、当初の研究計画の変更を予定している。具体的には、コンパクト複素曲面に対するSeiberg-Witten不変量の代数幾何学版であるLIU不変量の非完備代数曲面への拡張を当初の主な目的としていたが、これを変更し、LIU不変量が構成された論文で不完全であると思われるところの詳細を埋める作業をまず完了させることを主な目的としたい。研究代表者のこの方向の理解を補うためにも、研究分担者の協力もさらに仰ぎながら研究を進めていく。
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