2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20540109
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
中村 健一 The University of Electro-Communications, 電気通信学部, 助教 (40293120)
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Keywords | 反応拡散系 / 数理生態学 / 界面方程式 / 進行波 |
Research Abstract |
1.競争関係にある2種生物の拡散増殖モデルとして広く用いられているロトカ・ヴォルテラ2種競争系に対し,特異極限を取ることで得られる界面方程式の進行波について研究を行った.具体的な内容は以下の通りである. (1)境界が空間再帰的な構造を持つ2次元シリンダーにおいて生物の競争が行われる場合に,シリンダーの太さ,2種類の生物の競争力の差(これは,もとの2種競争系の1次元進行波の速度を用いて表現できる),および境界形状の最大の傾きという3つのパラメータ間にある条件が成り立つときに,進行波が(時間シフトを除いて)一意に存在し,しかも大域的漸近安定であることを示した. (2)(1)で得られた進行波の平均伝播速度について考察し,境界の空間構造が再帰的な場合は,一般には平均伝播速度が定義できないことがあること,およびエルゴード的な空間構造を持つ場合は平均伝播速度が自然に定義されることを示した.また,(1)で述べた3つのパラメータがある関係を満たす場合は,平均伝播速度が0であうが時刻無限大で無限遠方に到達する進行波が存在することを示した. (3)さらに,境界が非常に微細な空間再帰的形状をしている場合の進行波の形状および平均伝播速度の均質化極限を求めるとともに,境界近くの解の形状や挙動を精密に評価できるような比較関数を構成することで,空間構造の細かさを表すパラメータを0に近づけたときに進行波の平均伝播速度が均質化極限にどのようなオーダーで収束するかを詳細に調べた. 上記の結果は2種競争系の界面方程式に対するものであるが,この研究において開発された手法は,空間形状を考慮した神経内の興奮伝達モデルやカルシウム伝播モデルなど,空間非一様性を有する反応拡散系の諸問題に対するアプローチ手法として利用できることが期待される.
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