2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20540121
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
濱名 裕治 Kumamoto University, 大学院・自然科学研究科, 教授 (00243923)
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Keywords | Wiener sausage / ラプラス変換 / 漸近挙動 |
Research Abstract |
ランダムに不純物を含む多次元格子上のランダムウォークの再帰性の問題を解決するにあたって,多重点の個数に関する大偏差原理を考える必要がある.その前段階の,訪問点の個数に関する大偏差原理も未解決となっているが,この問題を解決するために,比較的計算が容易な連続対応のWiener sausageの体積について,エントロピー関数の決定を当面の目標に設定して,本年度は,時刻tまでのWiener sausageの体積の期待値に関する漸近挙動を研究した.時刻tが増大するときの体積の増加率は,古くから研究されており,自由エネルギー関数の原点での挙動に関係していることが知られているが,これはエントロピー関数の決定の視点に立つと上からの評価を与えたことになっている.そこで,時刻tがゼロに減少する場合のWiener sausageの体積の期待値挙動が自由エネルギー関数の上からの評価に関係し,それがエントロピー関数の下からの評価を与えることから,時刻がゼロに近い場合の体積の期待値の漸近挙動や級数展開を研究した.ここで考えているWiener sausageは,球体をブラウン運動の道に沿って動かしたときに得られる図形である.その結果,次元に関わらず,時刻tの平方根と同等の減少率であることがわかり,係数に動かした球の表面積が現れることもわかった.これは,一次近似であるが,奇数次元の場合は,さらに高次の近似を得ることができる.実際に,Wiener sausageの体積の期待値は,時刻tの平方根に関する冪級数に展開できることが証明できた.以上,Wiener sausageの体積の期待値に関して得られた結果を論文にまとめ,学術雑誌に投稿した.
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