2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20540133
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
樋口 雄介 昭和大学, 教養部, 講師 (20286842)
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Project Period (FY) |
2008-04-08 – 2013-03-31
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Keywords | グラフ / 酔歩 / ラプラシアン / スペクトル幾何 / 被覆時間 |
Research Abstract |
本研究は,グラフの幾何構造とグラフ上の作用素のスペクトル構造,そしてグラフ上の酔歩の挙動の3者の相関関係を明らかにすることを目標としてきた.本研究期間内に有限グラフ上の酔歩の被覆時間(全ての頂点を訪問するのにかかる最短時間の期待値)に対して,spider graph というグラフの族に対してある一定の結果を得た.しかしより一般のグラフでの被覆時間の詳細を得るには,グラフのスペクトルに関する新たな切り口が必要なことが判明したため,グラフの幾何とスペクトル構造との相関解析の研究に重心を移動した.本年度は,昨今脚光を浴びつつあるグラフ上の量子ウォーク,とくにグラフ上の酔歩から誘導されるものの挙動について注目し,いくつかの結果が得られた.ひとつは,グラフ上で波動函数を考えた散乱問題において,その散乱振幅のある種の極限として量子ウォークの遷移作用素が表現でき,それによって量子ウォークはある意味の共鳴状態を意味するのでは,という感触が得られたことである.一方では,円分多項式という代数的性質を用いて,遷移作用素が周期性をもつ有限グラフの族をいくつか決定した.なお,量子ウォークの遷移作用素のスペクトルを眺めると,離散ラプラシアンに有限の台をもつポテンシャルを加えたときのグリーン函数を解析接続したときの特異点集合(レゾナンスと呼ぶ)との類似点が多く見られる.残念ながら現在のところ,一般のグラフに対してのレゾナンスの定式化は成功していないが,それはこれからの課題でもあり,量子ウォークのある種の共鳴性の解決とほぼ同等の難易度であることが想定される. 本研究の全期間を通しての実績としては,酔歩の被覆時間を解決するには現存する離散スペクトル幾何の情報では不十分であることが明らかになったことともいえ,その中で一定の結果が出せたことは,おおむね成功だったのではと自負するものである.
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Current Status of Research Progress |
Reason
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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