Research Abstract |
本研究の目的は,確率空間上の確率変数が作るBanach関数空間の構造を,マルチンゲール理論を用いて解析すること,及び,Banach関数空間の理論のマルチンゲール理論への応用を研究することにある. 本年度は,当初の予定を少々変更して,平均振動の可積分性によって定義されるマルチンゲールのBanach空間の研究を行った.XをBanach関数空間とし,F=(F_n)をフィルタレーションとする.任意のn∈Nに対して,不等式E[|f_∞-f_<n-1>|| F_n]〓E[γ|F_n]を満たすγ∈Xが存在するような一様可積分マルチンゲールf=(f_n)の全体をK_1(X,F)で表し, sup_n E[|f_∞-f_<n-1>||F_n]∈Xであるような,一様可積分マルチンゲールf=(f_n)の全体をK_2(X, F)で表す.K_1(X, F)及びK_2(X, F)はいずれもBanach空間であり,前者はGarsiaによって,後者はLepingle等によって詳細に研究されている.これらの空間は互いによく似た空間であり,実際,多くの場合これらは一致する.例えば,X=L_p (1<p<∞)の場合には,任意のフィルトレーションF=(F_n)に対してK_1(X, F)=K_2(X, F)となる.一般のBanach関数空間Xに関しては,本年度の研究の結果,「任意のフィルトレーションF=(F_n)に対してK_1(X, F)=K_2(X, F)であるための必要十分条件は,(必要であれば)ノルムを付け替えることによりXが再配分不変空間となり,更にそのupper Boyd indexが不等式β_X<1を満たすことである」という結果を得た.この結果は,マルチンゲール理論を専門とする研究者にとって,予想外の結果であろうと思われる.というのは,例えばX=LlogLの場合には,K_1(X, F)=K_2(X, F)が成り立たないフィルトレーションFが存在するという,驚きに値する事実を意味するからである.これらの空間に関する他の結果と併せて,現在,論文を作成中である.
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