2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20540181
|
Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
北 直泰 University of Miyazaki, 教育文化学部, 准教授 (70336056)
|
Keywords | 非線形シュレディンガー方程式 / 解の漸近挙動 / 解の減衰評価 |
Research Abstract |
平成20年度は,非線形シュレディンガー方程式の初期値問題について首都大学東京の下村明洋氏との共同作業で集中的に研究することとなった。特に解が時刻の経過とともにどのように変化していくのかを調べ,その減衰オーダーのみならず,解をグラフ化したときの形状変化(これを「漸近挙動」と呼ぶ)をも具体的に決定することができた。このような問題は,非線形項の係数が実数の場合にHayashi, Naumkin, Kaikinaらによってかねてより研究されていたが,本研究では非線形項の係数がより一般的な複素数になっている場合を取り扱っている。係数が複素数になることは,光ファイバー工学的に解釈すると光信号(=電磁波)が不純物が混入した光ファイバー内を伝播する際に生じる非線形的なエネルギー散逸を取り込んだ状況に相当する。したがって,上記先駆者が研究したものよりも現実的な物理的状況の下で解の素性を決定したことになる。既存の結果と今回得られた結果に見られる大きな違いは,「解の減衰オーダー」である。既存の結果では解の減衰オーダーは線形シュレディンガー方程式の場合と同じものになることが知られているが,今回の結果では線形シュレディンガー方程式の場合よりも早く減衰することがわかった。これは,非線形項の係数に虚部(ただし負の値)が存在することで,解の減衰オーダーに非線形特有の効果が陽的に現れることを意味している。この点で非線形シュレディンガー方程式の研究分野では意義のある結果になったと言えよう。さらに今回の研究では“大きな初期データ"に対して解の漸近挙動を決定できたことも研究成果報告の中で強調しておきたい。
|