Research Abstract |
1.任意の有界領域において劣線形楕円型偏微分方程式をディリクレ境界条件の下で考察した.係数関数が境界において強い特異性を持つ場合において,正値解の存在と一意性を示し,符号変化する解が無限に多く存在することを証明した.また,これらの解が正則性を持つことを証明した.係数関数の滑らかさに応じて,解の1回連続微分可能性と2回連続微分可能性を証明し,正値解の無限回微分可能性を証明した.証明は,変分法を用いて行われる.境界での解の特異性を処理するために新しいハーディー・ソボレフ型の不等式を導入している.1次元のハーディーの不等式を利用して,境界近傍での解のハーディー型不等式を構成し,これとソボレフの不等式を補間して,境界近傍での解の正則性を証明している. 2.1次元pラプラス方程式をディリクレ境界条件の下において考察した.係数関数が境界に強い特異性を持つ場合において解の分岐を研究した.このような特性を持つ方程式の研究は,従来から行われてきている.しかしながら,ここで得られた成果は,従来の方程式よりもさらに特異性が強い方程式を扱っている.正値解及び符号変化する解の多重存在及び非存在についての詳細な結果が得られた.また,分岐した解の大域的挙動及び解の零点の個数についての精密な評価が得られた.n番目の固有値から分岐する解は,n-1個の零点を持つことが示されている.また,係数関数と固有値との関係により,分岐した枝がどのような方向に延びるかについての詳細な結果が得られている.さらに分枝の非有界性が示されている.このような結果は,従来の結果を特異性の強い方程式にまで拡張したものであり,特異微分方程式の解の研究において重要な成果となっている.これらの結果は,変分法,局所分岐理論,大域分岐理論,関数解析,エネルギー法,写像度,常微分方程式のスツルムの比較定理及び,Picone等式などを組み合わせて証明されている.
|