2009 Fiscal Year Annual Research Report
シュレーディンガー作用素のスペクトル解析に基づく超格子構造の解析
Project/Area Number |
20540204
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
小栗栖 修 Kanazawa University, 数物科学系, 准教授 (80301191)
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Keywords | シュレーディンガー作用素 / スペクトル解析 / 超格子 / δポテンシャル / 負の固有値 / 離散ラプラシアン |
Research Abstract |
超格子構造とは、江崎玲於奈の提唱による異種半導体の薄膜を積層させて製造される人造の構造物で、量子効果を用いた半導体デバイスの一種である。特定のエネルギーを透過または遮断する特性を持つ量子デバイスであり、透過域には真の透過域と準透過域が生じることが知られているが、その生成の原因は不明で、その制御は難しい問題になっている。 本研究はこの超格子構造を数学的対象ととらえて、その特性を数学的に解析することにある。この問題は、数学的には一次元のシュレーディンガー方程式の逆散乱問題のひとつである。本年度の研究では次のような成果が得られた。 まず、研究協力者である浅倉邦彦らと、デルタクライム型のポテンシャルによる変調超格子構造の量子デバイスとしての可能性の検討を行った。その結果、シミュレーションも量的には不十分であるが、従来のデルタ型と類似の特性が得られる見通しがたった。 また、純数学的な課題として、デルタ型ポテンシャルによる有限個の点相互作用を伴う一次元シュレーディンガー作用素の離散固有値の個数の問題を考察した。AlbeverioとNizhnikによる結果を、一般の場合に拡張した結果が得られて、専門誌に掲載された。さらに離散シュレーディンガー作用素の場合について、昭和大学の樋口雄介氏と共同で計算をすすめて、未知であった類似の結果と、その拡張を得て、論文を投稿中である。
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