Research Abstract |
交付申請書に記載した研究目的は,形状記憶合金で作られるセンサーの解析とコンクリートの中性化の解析である。以下,この2点に関する研究成果を述べる。 ・形状記憶合金で作られるセンサーの解析:センサーに対する数理モデルは既に確立している。そこでの未知関数は,変位と温度である。前年度までに,温度分布が既知の場合と未知の場合との両方の問題の適切性を証明している。しかし,温度分布が未知な場合,初期値に物理的にかなり強い仮定が必要であった。そこで,今年度は,その仮定を弱めることを考えた。結果として,初期値に対する妥当な仮定の下で,問題の適切性を示すことできた。また,解の挙動に対する興味深い数値解析の結果を得た。次年度は,この現象に対する数学的表現について考察するとともに,形状記憶合金で作った輪の数理モデルに対しても解析をする予定である。 ・コンクリートの中性化:今年度,この問題に対し,次の3つの結果を得ることができた。 (1)中性化速度の評価従来,実験から,中性化の速度は,時間の0.5乗に比例することが分かっていたが,これを保証する理論的結果はなかった。今年度,これに対し,中性化の速度が時間の0.5乗に比例する関数で,上から評価できることを示した。さらに,境界条件が時間に依存しなければ,時間無限大のとき全領域が中性化されることを証明した。 (2)問題の適切性を示す上で,初期値に対する仮定を前年度までの結果よりも弱めることができた。その証明では,共役の方程式の方法が有効であった。 (3)前年度までの結果では,ヘンリーの法則に対し,線形性を仮定していたが,エネルギー評価を改良することで,非線形な場合でも,解が時間に関して大域的に存在すること証明できた。
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