Research Abstract |
19世紀の解析学の問題意識の一つに,「微分方程式で定義される新しい特殊関数を数多く見つける」と言うものがあった.熊本大学の木村弘信氏は,この問題意識に基づき,5の分割に応じた2階の線形常微分方程式のモノドロミー保存変形を考察し,そこから7つの非線形方程式を導いた.(以下,この方程式を木村のガルニエ系と呼ぶ).また研究代表者は,木村氏の考察した線形方程式をさらに退化させたものを考え,そこから8個の非線形方程式を導いた.(以下,これを半整数型ガルニエ系と呼ぶ).さらに木村のガルニエ系のうち,(4,1)型,および(3,2)型と呼ばれる方程式と,研究代表者が見つけた(5/2,1,1)型方程式の有理解をすべて求め,これらの方程式が双有理変換で移りあわないことを示した.2008年度は,このことを踏まえ,(3,2)型方程式の代数解(片方の変数を定数と置くと代数解になっている解)をすべて求めた. (3,2)型方程式は,一方の変数を止めると,原点で特異点をもち,もう一方の変数を止めると,有界なところで正則となる方程式である.このようなものは,木村のガルニエ系にも,半整数型ガルニエ系にも存在する.したがって,これらと(3,2)型方程式との関係を調べる必然性が生じるわけであるが,今回の代数解は,これらの方程式の関係を調べる上で,重要なデータとなる.(例えば,代数解の分布状況や,代数解に含まれるパラメータの個数から,2つの方程式が,代数的な変換で移り合わないことを示せるときがある.)この意味で,今回の研究は意義のあることだと思われる.
|