2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20540213
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
植田 好道 Kyushu University, 大学院・数理学研究院, 准教授 (00314724)
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Keywords | 非可換 / ハーディー空間 / バナッハ商空間 / 自由確率論 / フォンノイマン環 / 測度付き離散擬群 |
Research Abstract |
前年度の研究を踏まえ今年度は非可換ハーディー空間のバナッハ空間論的性質の解明に向けた研究を主に行った.非可換ハーディー空間の前共役はある商空間として与えられる.この研究の目標はBourgainによる一連の仕事を非可換という極めて一般化された設定まで拡張することである.Bourgainの議論の詳細を見ると,考察の商空間への商写像の右逆写像を考え(右逆写像の存在自体も非自明で,これは古典的な定理が保証する),その性質を調べるのが本質のようだ.研究代表者は非可換の設定でも右逆写像が存在することを以前に確立した.ゆえに,その詳細な性質の解明が次の目標になる.通常のハーディー空間論ではこの商写像の右逆写像が弱前コンパクト集合を弱前コンパクト集合に写すという際立った性質が成り立つことがよく知られている.この性質が非可換の設定で成り立つかが問題になる.少し否定的なことをほのめかす結果もあり微妙なのだが,最終的に非可換一般で問題の性質が成り立つことを証明することができた.これはある意味で有名なPelczynskiによるモノグラフのレベルまで非可換理論が到達したことを意味する.年明けに論文の形にまとめ,プレプリントアーカイブを通して広く研究者に公開した.専門雑誌への投稿はまだである. 自由確率論の研究(特に,自由相互情報量)および測度付き離散擬群とそれから生じるフォンノイマン環の研究も行ったが,上記研究に思いのほか時間がかかり大きな成果は上がらなかった.これらの更なる深化・発展は来年度以降の課題である.
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