2010 Fiscal Year Annual Research Report
日韓共同電波干渉計観測による若い電波銀河の活動性と進化の研究
Project/Area Number |
20540233
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
輪島 清昭 山口大学, 大学院・理工学研究科, 助教 (90452630)
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Keywords | 電波天文学 / 宇宙物理 / 国際協力 |
Research Abstract |
本研究では若い電波銀河の高周波での電波放射を高分解能で観測し、電波源の各位置におけるシンクロトロン放射電子のエネルギー分布を調査することにより若い電波銀河の活動性と進化の一端を明らかにすることを目的としている。若い電波銀河はコンパクトな構造を持つとともに比較的弱い電波放射を伴うため、広帯域のデータ取得が可能なシステムを用いた高感度での超長基線干渉計(VLBI)観測の実現が求められる。今年度は電波銀河の広帯域スペクトルに関する理論研究および韓国VLBIネットワーク(KVN)グループとの共同観測を主に行った。 KVNグループとの共同研究として、1日以下の時間スケールで強度変動(IDV)する活動銀河の中心核の性質を明らかにするため、山口32m電波望遠鏡(観測周波数8GHz)とKVNのソウル21m電波望遠鏡(同22,43GHz)を用いてIDV活動銀河2天体の48時間同時観測を実施した。その結果、いずれの天体でも3周波数間で時間遅延なくほぼ同様の変動傾向が見られた。IDV現象は従来主にセンチ波帯の低周波で検出され星間プラズマのシンチレーションに起因すると解釈されてきたが、KVNの高周波観測でも同様の変動が見られた今回の結果はIDV現象の解釈に新たな視点をもたらすものである。 また、上記の観測的研究と並行して電波銀河で観測される広帯域スペクトルから予想される降着円盤の構造の計算機シミュレーションによる理論研究を共同で行った。電波銀河の中心核において大局磁場中に存在し放射が非効率的な降着流を持つ降着円盤(resistive RIAF)のモデルを新たに導入することにより、電波銀河NGC 4261の中心領域で観測される電波でのカウンタージェットのギャップが従来考えられてきた自由-自由吸収によるものでなくシンクロトロン自己吸収に起因することを示した。また、同モデルを用いた計算機シミュレーションによりNGC 4261の電波からX線にわたる広帯域スペクトルを再現することに成功した。これらの成果を査読論文として出版した(Kaburaki et al.2010,PASJ,62,1177)。
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