2009 Fiscal Year Annual Research Report
多胡事象(近傍星の重力マイクロレンズ現象)と銀河系構造
Project/Area Number |
20540239
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Research Institution | Nagano National College of Technology |
Principal Investigator |
大西 浩次 Nagano National College of Technology, 教授 (20290744)
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Keywords | 重力マイクロレンズ現象 / 多胡事象 / 胡天体 / 褐色矮星 / MOA / OGLE-2007-BLG-224 / MOA-2007-BLG-192 / 質量分布関数 |
Research Abstract |
多胡事象とは、近傍の星で確認された初めての重力マイクロレンズ現象である(大西2006,Fukui et al.2007)。重力マイクロレンズ現象とは、重力レンズ天体の重力レンズ効果によって背景天体が増光する現象である。この現象の起きる確率は、銀河系中心の天体でも100万分の1程度であり、近傍の星ではさらに小さい。このため、近傍の星でのマイクロレンズ現象(多胡事象)は、確率的にありえない現象であった。一方、マイクロレンズの光度曲線の解析などから、レンズ天体(=多胡天体)は褐色矮星などの低質量星である可能性が高いと考えられる。これらより、多胡事象は「現在考えられている質量分布関数より低質量側が大きい」ために起きた現象である解釈できる。これを確かめるために、まず、レンズ天体(=多胡天体)の正体を明らかする必要がある。Gaudiたち(2008)は、増光の直後の近赤外線(JHK)測光観測より、増光した背景天体(AOV型星)から赤外超過が見えたようだと指摘している。そこで、増光天体と多胡天体のスペクトルを分離するために、2008年7月22日から23日にかけて、日本の赤外線観測衛星「あかり」のNIR cameraで、GSC0356-01328の近赤外線分光観測を実施した。残念ながら、データのS/Nが良くなく、解析が進んでいない。これらの研究と同時に、私の属する重力マイクロレンズ観測グループMOAはマイクロレンズ現象OGLE-2007-BLG-224(Gould et al.2009)の解析からレンズ天体が近傍の褐色矮星(0.06太陽質量)である事が判った。昨年のMOA-2007-BLG-192の褐色矮星と惑星から成る惑星系の発見(Bennett et al.2008)と共に、低質量星が標準的な銀河モデルよりはるかに多数ある可能性を示唆しており、多胡事象の確率的な解釈と矛盾していない。
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