2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20540248
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
石塚 成人 University of Tsukuba, 大学院・数理物質科学研究科, 准教授 (70251030)
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Keywords | 格子場の理論 / 共鳴状態 / 散乱位相 |
Research Abstract |
本研究の目的は「格子QCDにより共鳴状態の性質を調べる方法の確立」である。具体的な方法として、崩壊の終状態の散乱位相を計算し、その値から共鳴状態の崩壊幅と共鳴エネルギーを求める方法を採用する。この目的のため、平成20年度からρ中間子崩壊の研究を開始し、平成21年度では前年度の基礎研究を受けて数値計算を行った。 計算ではPACS-CSグループによって生成されたゲージ配位(π中間子質量=410MeV)を用いた、ρ中間子の研究に適した2種類の演算子を選び相関関数行列を作る。これを対角化し、基底状態と励起状態をとりだし、それぞれの状態のエネルギーを求めた。そのエネルギーから有限体積法により散乱位相を計算し、ρ中間子の崩壊幅を得た。得られた崩壊幅の値は、110(24)MeVである。数値計算はクォーク質量の大きい点で行われたが、得られた崩壊幅の値はほぼ実験値(150MeV)に等しい。これは、pππ有効結合定数のクォーク質量依存性が小さい事を意味する。この小さい質量依存性は、カイラル摂動論により予想されていたことであり、その予想が第一原理計算により示されたことになる。この研究成果は平成22年7月までに論文発表を行う予定である。 21年度後半より、更に小さいクォーク質量での計算を行い、より信頼性の高い崩壊幅を求める研究を開始した。クォーク質量が小さい場合、大きい運動量を持ったπ中間子を扱う必要があり、これが大きい統計揺らぎを引き起こす。予備的に行った計算(π中間子質量=300MeV)により、基底状態の相関関数は小さい統計揺らぎで得る事ができるが、励起状態では揺らぎが非常大きく、演算子を改良する必要があることがわかった。現在は演算子の改良方法を研究している。すでにいくつかの有効な演算子をみつけており、それらを使った数値計算を開始している。
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Research Products
(2 results)