2008 Fiscal Year Annual Research Report
宇宙に於けるエネルギー収支の型録化と交互作用の試験
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20540255
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
福来 正孝 The University of Tokyo, 宇宙線研究所, 教授 (40100820)
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Keywords | 宇宙エネルギー型録 / 星生成率 / 宇宙背景輻射 / 宇宙塵 / 超新星生起率 / 銀河合體 / SDSS測光標準系 |
Research Abstract |
宇宙の發展に於いてエネルギーは最も主導的な役割を演じ、宇宙の進化過程に於けるエネルギーの再分配過程とその収支は、宇宙の發展を制禦するものである。この研究では宇宙の所有現象を數上げ其處に存在するエネルギーを評価し各項目間の整合性を調べる事に據って、エネルギーの移行(エネルギー収支)即ち宇宙の物理的發展過程を明らかにしやうとするものである。現在迄に約150項目を數上げそれら相互間のエネルギー収支の無矛盾性を檢討しつつあるが本年度は取分け次の四点に重点を於いて研究を行った。 1)過去の星の進化によって生成される宇宙塵に就いての考察は觀測される宇宙塵の總量が星生成より期待される生成量より少く我々の未だ知らない何處かに宇宙塵が存在してゐるのであらう事を示唆してゐるが此missing dustの問題に関してquasar^- galaxy相關の解析がヒントを與へてくれる。我々は銀河周辺を通るquasarの光は些の赤化を受けており赤化の程度の波長依存性はdustのよるものと辻褄が合う事を見い出した。Dustの密度は小さいが体積が大きい爲總量は銀河円盤内に存在が知られてゐる量と畧同量と見積もられ(論文印刷中)、missing dustの問題が解決される事が示された(論文投稿中)。 2)次に焦點を當てたのは動的エネルギー源として重要な超新星に関する研究であり、特にその生起率と環境依存性の考察に重點をおいた。此問題に関してはSDSSデータを用ひて調べた。低赤方偏移0.05<z<0.3でのIa型超新星の生起率を精確に評価した他、生起率が銀河の光度によい精度で比例する事、銀河の形態依存性を殆んど示さない事、銀河円盤内に奥深くあれば受けるであろう吸収を殆んど受けてゐない事を示した(論文出版済)。 (3)銀河に蓄積されてゐる星の生成要因の評価。現存の星の内、どれ丈が既に存在する大銀河で新たに生成されたものであり、どれ丈が近くの矮少銀河の併合或いはその衝激による生成と考へられるかに関する知見を得ようと云ふのが目的である。この問題に関する初期の解析として我々は衛星銀河數が銀河の二点相關凾數の延長上にある事を示した。この結果は既に出版されてゐる。これを手掛かりにして各成分への分解を行う。 (4)SDSSのデータは豊富な内容を持ち、宇宙エネルギー型録の目的に合はせて解析がなされつつあるが、先づ測光データの系統誤差の問題の考察が必要であるの考察が必要であり、實際の観測が爲された測光系が當初に定義された測光系とどの程度異なるか、そしてSDSS測光標準系で観測された天體がどのような性質を示すべきかに關する仕事を完成させる必要があるものとの認識を得た。この研究は未だ途上にあるが基礎データを與えた部分は完成しており出版印刷中であり、星の測光に関する部分は論文作製中である。
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