Research Abstract |
数値相対論のシミュレーションに関しては,昨年に引き続き大原が中心となって性能評価を行った。特に,本年度は,Nehalem-EPアーキテクチャのIntel Xeon X5550×2のマシンを組み立て,最大8並列での並列計算の性能について,前年度に購入したAMD Opteron 2382を用いたマシンとの比較を行った。その結果,Xeonマシンでは,非並列の計算でもMPIによる並列実行でも。非常に良い能力を発揮することが明らかになった。特に,大きなメモリーが必要な計算では,Opteronマシンの2倍以上の性能を発揮している。これは,メモリー・アクセスのスピードの向上によるものと考えられる。 いっぽう,重力波データ解析に関しては,高橋が主導し,新たに,時系列解析法のひとつであるHilbert-Huang変換を用いた方法の実装に着手した。基本的なプログラミングは完了し,理想的なレーザー干渉計データである静的ガウスノイズ時系列データに,ポスト・ニュートン法で計算したコンパクト連星から放射される重力波信号を埋め込み,Hilbert-Huang変換により,この重力波信号が取り出せるかどうかの検証を行った。その際,データの与え方によっては,明らかに物理的ではない,予期しない振動の出現が起こることが明らかになった。この原因は,intrinsic mode functionを計算する際の極大,極小の抽出方法,あるいは内挿公式として用いている3次自然スプラインの問題と考えられる。また,Hilbert変換の計算には,現在のところFourier変換を用いた方法を採用しているが,計算時間の縮減の点から,これについてもさらなる検討が必要であることが分かった。いずれも,解析方法の原理的な問題ではないので,数値計算方法の改善により修正可能なものと考えらル。これらの研究と並行して,高橋が中心となり,LIGOグループと協力して,従来のmatched filter法をコンパクト連星の重力波信号に関する大規模なテンプレートに適用するという解析方法の実装を進め,十分な性能を示すことができた。
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