2008 Fiscal Year Annual Research Report
有限温度・有限密度カイラル相転移とハドロン・クォークの性質の研究
Project/Area Number |
20540262
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
原田 正康 Nagoya University, 大学院・理学研究科, 教授 (40311716)
|
Keywords | 量子色力学(QCD) / カイラル対称性 / 低エネルギー有効模型 / カイラル相転移 / レプトン対エネルギー分布 / シュウィンガー・ダイソン方程式 |
Research Abstract |
(1)シュウィンガー・ダイソン方程式を用いた、湯川模型におけるフェルミオンスペクトルの解析 有限温度・有限密度QCD相転移点近傍で現れると期待されている、スカラー型の揺らぎの効果がクォークスペクトルに及ぼす影響を、スカラー型揺らぎとクォークを含む湯川模型の枠組みにシュウィンガー・ダイソン方程式を用いて解析しました。本解析ではスカラー型揺らぎとクォークのスペクトル関数に対する連立方程式を解く新しい手法を用いて、これまでの解析では含まれていなかった高次効果を取り入れました。そして、これまでの解析で指摘されていたクォークスペクトルに現れる3ピーク構造は、高次効果を取り入れた場合にも保たれることを示しました。(成果は、Physical Review Dに掲載されました。) (2)レプトン対エネルギー分布へのベクトル-軸性ベクトル中間子混合効果の解析 相転移点近傍のレプトン対エネルギー分布の実験データから、相転移近傍でのρ中間子などのベクトル中間子の性質の変化を調べるためには、その他のハドロンの効果も取り入れた解析が重要となります。本研究では、有限温度媒質中での軸性ベクトル中間子の効果を、「隠れた局所対称性」に基づく低エネルギー有効模型を用いて取り入れ、カイラル対称性の回復と共に軸性ベクトル中間子が軽くなる場合とベクトル中間子が軽くなる場合での解析を行いました。どちらの場合にも、低温度領域で存在するベクトル中間子と軸性ベクトル中間子の混合効果が、カイラル対称性が回復するにつれて小さくなることを示しました。そして、この混合効果減少がカイラル対称性回復のシグナルとなる可能性を指摘しました。(成果はPhysical Review Dに掲載されました。)
|