2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20540267
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
巽 敏隆 Kyoto University, 大学院・理学研究科, 助教 (40155099)
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Keywords | 強磁場中性子星 / クォーク物質 / 帯磁率 / グルオン遮蔽 / フェルミ液体理論 / 非閉じ込め転移 / 非フェルミ液体効果 / QCD相図 |
Research Abstract |
本年度はフェルミ液体理論とQCDを基礎に、有限密度・温度でのクォーク物質の帯磁率を計算し、その磁気的性質を詳細に調べるとともに、強磁性相への相転移を考察し、密度・温度平面において磁気的相図を描いた。ゲージ相互作用を用いると物理量に赤外発散が現れることが知られているので、意味のある結果を得るためにはグルオンの遮蔽効果を考慮することが不可欠である。実際微視的な計算によってクォーク多体効果を計算すると、縦波グルオンにはデバイ質量で表わされる静的遮蔽があり、相互作用レンジは短距離になり、赤外発散は修復される。一方横波グルオンは動的遮蔽しか受けず、フェルミ面近傍の相互作用を考えるとランダウーミグダルパラメターにはLog発散が残る。T=0の場合に、フェルミ液体理論を用いて帯磁率を計算すると、横波グルオンの効果としては状態密度とスピン依存相互作用に含まれるLog発散が相殺して有限値を与え、結局縦波グルオンの効果としてデバイ質量のLogで与えられる結合定数の非解析的項が現れるのが特徴的である。一方有限温度では横波グルオンの動的遮蔽効果が主要な温度依存性を与えることがわかった。この効果を注意深く考慮すると、温度依存性としてT^2Log Tをもつ異常項が現れる。これは従来のフェルミ液体理論では無かった効果で、非フェルミ液体効果と呼ばれるものである。これまで比熱に対しては多くの著者らによってTLog Tの依存性をもつ非フェルミ効果が議論されてきたが、我々の発見したものは全く新しいものである。これらの研究により、密度・温度平面での相図が得られ、超新星爆発時での磁場の発現など強磁場中性子星(マグネター)との関連が議論できるようになった。
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