2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20540268
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
浅川 正之 大阪大学, 理学研究科, 教授 (50283453)
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Keywords | QCD相転移 / クォークグルーオンプラズマ / 輸送係数 / 磁場 / アノマリー / 格子ゲージ理論 / 相対論的流体力学 |
Research Abstract |
本年度には、まず格子ゲージ計算を前年度までに整備した計算コードを用いて行った。クエンチ近似を採用し、作用としてはプラケット作用を使用した。また、交付申請書に記載したように、虚時間方向に十分な数の格子点を確保するため、虚時間方向の格子間隔が空間方向の格子間隔よりも短い非等方格子を用いることにする。有限温度における中間子状態、緩和係数などの物理に対しては、赤外部からの非摂動的な寄与が重要と考えられるので、虚時間方向だけでなく、空間方向の格子サイズも十分に大きく取って計算を行った。 実際の研究内容としては、まず相転移温度以上の温度における有限運動量をもったチャーム中間子のスペクトル関数を、最大エントロピー法を用いて求めた。その結果、有限運動量では、擬スカラーチャンネルにおけるスペクトル関数が抑圧される可能性があること、ベクトルチャンネルで可能な縦横二つのスペクトル関数が異なる可能性があることを見出した。さらに、高エネルギー原子核衝突の理解に必要な、相対論的要請を満たす速度の高階の微分を含むIsrael-Stewart形の流体方程式において導入される粘性と緩和時間を結ぶ比例係数を、Prattによって示唆された方法によって格子上でQCDの第一原理から計算することに成功した。 また、高エネルギー原子核衝突において生成される強い磁場のクォーク物質に対する効果が話題となっているが、我々はアノマリーによって誘導された有効相互作用に基づいて計算を行い、この効果によってつくられる反応平面に関する電荷不均衡は非常に小さく、STAR実験で観測されている異常は別の物理あるいは電荷不均衡ではない別の原因に起因するはずであることを議論した。
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Research Products
(6 results)