2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20540269
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
藤田 裕 大阪大学, 理学研究科, 准教授 (10332165)
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Keywords | 宇宙物理 / X線天文学 / プラズマ・核融合 / 宇宙線 |
Research Abstract |
銀河団は遠方にあるため、その中での高エネルギーの粒子加速について詳細な観測データを得ることは難しい。そこで本年度は星形成領域での高エネルギー粒子の加速の研究をまず行い、その成果をマクロなスケールである銀河団に応用した。まず理論的に星形成領域での粒子加速と、加速された粒子の伝播について調べた。手法としては数値シミュレーションを用いた。、粒子の伝搬は粒子の運動に伴って発生する磁場のゆらぎに依存するので、その効果も考慮した。これがこれまでの研究と異なる本研究の特徴である。計算の結果、粒子の伝搬は粒子自身が生み出す磁場のゆらぎに妨害され、これまで考えられていたよりも有意に遅くなることがわかった。本研究の結果から、銀河団で加速された粒子が周囲の空間に広がる過程もかなり遅いことが予想される。さらに精密なシミュレーションコードの開発も行った。このコードは粒子の加速と伝搬を同時に扱える世界でも珍しいものである。 また銀河団スケールに広がった電波銀河からの電波放射の観測データの解析も行った。研究対象に選んだ電波銀河にはシンクロトロン放射が存在することから、この電波銀河の周辺の領域にも高エネルギー粒子が存在していることが予想されるが、その高エネルギー粒子によって宇宙背景放射のスペクトルが変形するスニヤエフ・ゼルドビッチ効果は観測されなかった。このことから高エネルギー粒子の密度について制限が得られた。
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