2011 Fiscal Year Annual Research Report
有限温度の非平衡場の理論における物理量の第一原理からの解析
Project/Area Number |
20540279
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
青木 健一郎 慶應義塾大学, 経済学部, 教授 (00251603)
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Keywords | 非平衡 / 場の理論 / 有限温度 / 揺らぎ / 第一原理 / 局所平衡 |
Research Abstract |
平成23年度の研究は,表面の有限温度のゆらぎを直接測定する研究を中心として行いました.一般にあらゆる表面は有限温度で常時振動していますが,その振幅があまりにも小さいため,その性質を直接調べることは困難です.いわゆる量子力学的なショット雑音があるために,通常の方法では精度の高い測定をすることはできません.我々の研究では,独立な複数の測定の相関を用い,画期的な方法を用いて雑音を消去し,他の方法に比較して高い精度で表面振動のゆらぎのスペクトルを直接測定し,その性質を第一原理より分析しています.傾きのゆらぎと変位のゆらぎの両方について解析を進め,液体表面については基本的な性質を解明することができました.この研究は独自のものであり,前例が無く,今後重要な意味を持って来ると考えています.この研究は三井隆久氏と共同で行っており,現在論文1篇投稿中で,さらにもう1篇準備中です. 有限温度の非平衡系の研究では,第一原理よりどのようにして,系統的に輸送係数を求めるかを現在調べています.近年,数値計算の発展により,数値的に一部の物理量を求められる格子系は多くありますが,解析的には求めることは困難です.これをいかにして系統的に近似して求めるかを現在までも研究しています.計算できる方法を明らかにしつつあり,近日中に発表する予定です. また,粘性係数は重イオン衝突などでも近年重要な意味を持つ非平衡系の輸送係数ですが,これを第一原理より場の理論で求める方法を研究しています.これに関しては,大規模な数値シミュレーションをする準備を整えているところです.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
有限温度の表面のゆらぎのスペクトルを測定し,その性質を理論的に解明する研究は順調に進んでいます.我々の精度でスペクトルを求めた例は,過去に無いユニークな研究であり,成果を確実に残すことができています.その他の研究についてもはっきりとした方向性を持たせることができており,近い将来具体的な結果に結びつくと考えています.
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Strategy for Future Research Activity |
画期的でユニークな研究であるので,まず当面は表面振動のゆらぎのスペクトルの性質の研究を進めて行きます.さらに,界面にもこの研究の方法を適用します.そして,非平衡系の有限温度の場の理論の研究も遂行して行きます.これについては,現在具体的な計画はできており,ある程度大規模な数値シミュレーションを行う段階に来ています.
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