2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20540307
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
鈴浦 秀勝 Hokkaido University, 大学院・工学研究科, 准教授 (10282683)
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Keywords | スピン・軌道相互作用 / スピンホール効果 / グラフェン / 電子・格子相互作用 |
Research Abstract |
初年度は有限系に対するスピンホールコンダクタンスの計算とグラフェン・カーボンナノチューブにおける電子と光学フォノンの散乱に関する研究を行った. スピン軌道相互作用を含む2次元電子系の最も単純な模型であるラシュバ結合を取り入れた強束縛模型により有限系のスピンホールコンダクタンスを数値的に計算した. 100×100程度の小さい系において不純物を含まない場合・含む場合の両者に対して過去の結果を再現した. 再帰的グリーン関数法により500×500程度の大きな系まで計算可能となったが, サイズを大きくすると現れるはずの量子干渉に起因する局在効果が全く見られず, 拡散的な伝導を示した. スピンホールコンダクタンスを求める試料と接続する理想的なリード線の配置を様々に変えることにより, その原因は試料の隅を通り抜ける経路の存在によることが明らかになった. つまり, 一般に用いられる,試料とリードの幅を同じにするという設定は不純物散乱の効果を正しく反映しておらず, リードの幅を狭くするか, リードの試料に繋がる部分にも不純物を導入する必要があることがわかった. このような配置での既存の計算結果は再検討を要することになる. グラフェン・カーボンナノチューブにおける電子と光学フォノンの相互作用に対する有効模型を構築した. 一般の電子・格子散乱ではガンマ点近傍のフォノンが支配的だが, 縮退した質量ゼロのディラック粒子という特異性を反映して, K点近傍のフォノンが支配的な役割を果たし, 輸送現象や光学応答において電子の谷間散乱を考慮する必要が有ることを明らかにした.
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