2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20540307
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
鈴浦 秀勝 Hokkaido University, 大学院・工学研究科, 准教授 (10282683)
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Keywords | グラフェン / カーボンナノチューブ / 電気伝導 / アンダーソン局在 / 励起子 |
Research Abstract |
グラフェンにおける電気伝導における量子干渉効果を明らかにするために,有限系のコンダクタンスを数値的に計算した.近年,端状態の伝導への影響が盛んに議論されているが,量子スピンホール系など,質量ゼロのディラック電子の示す輸送現象の特異性に注目が集まっており,そのバルクの電子状態の性質を,周期的境界条件を課すことにより周長の大きなカーボンナノチューブのコンダクタンスから議論した.強束縛模型により電子状態を記述し,短距離不純物を一定密度でランダムに配置した系の伝導を調べたところ,平均自由行程より系が大きければ,散乱が弱い場合は線形応答によるボルン近似の結果と一致し,ナノチューブのコンダクタンスから計算される2次元的伝導率により,等方的なバルクグラフェンの伝導が議論できることが明らかになった.散乱強度を上げることによりアンダーソン局在の効果が現れ伝導率はサイズに依存し,指数関数的現象に転じる.ただし,不純物ポテンシャル強度の最大値が飛び移り積分の値と同程度になると急激に散乱が増大した.これは,ディラック点から飛び移り積分程度エネルギーが離れたところに存在する分散が非常に小さく有効質量の大きな状態と混成することによる.零エネルギー付近の状態に近付くに連れて平均自由行程が増大するため,上記の混成を回避しながらディラック点近傍の伝導率を議論することはより大きなサイズで計算を行う必要があることが明らかになった. ナノチューブの光学伝導度に重要な寄与をする励起子状態について詳細に議論した.多谷構造に起因する電子状態の縮退が電子・正孔間クーロン相互作用の短距離成分により解け,励起子微細構造を与えるが,有効質量理論に基づきそのナノチューブの螺旋度依存性を決定した.
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