2008 Fiscal Year Annual Research Report
パイロクロア酸化物超伝導体におけるラットリング転移の研究
Project/Area Number |
20540311
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山浦 淳一 The University of Tokyo, 物性研究所, 助教 (80292762)
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Keywords | 強相関電子系 / 物性実験 / 構造相転移 / フォノン / 超伝導 |
Research Abstract |
β型パイロクロア酸化物超伝導体KOs206は、"硬い"かご状構造の中で非調和的な熱振動(ラットリング)をしている稀有な系である。この物質における未知の相転移(ラットリング転移)のメカニズムに関して、多様な実験手段で明らかにしていくことを目的としている。初年度の研究において、ラットリング転移に関する重要な知見が得られている。1つは、39K-NMRと高分解能中性子線回折の実験から、低温相の構造がある程度推定できるようになったこと。具体的には、部分群の考察により、高温側のFd-3mから、低温相でFd-3mかF-43mになっていると考えられることである。前者の場合、同形構造転移、後者なら、対称中心のない超伝導体ということになる。また、転移点において格子が0.01%程度膨らむという異常な知見も得られた。2つ目は、転移の起源が通常の構造転移ではなく、Kのダイナミクスの変化を基にしていると思われることである。今後、精密なX線回折と中性子線回折実験からのラットリング転移にともなうKのダイナミクスの変化を、電子密度の変化から考察する必要があることが判明した。また、非常に試料作製が困難であった本物質について、新しい単結晶合成法を見出し、定常的な単結晶育成に成功してきている。さらなる改良で、より大きな単結晶育成が可能になり、超音波分散や単結晶中性子線回折等の重要な実験が可能になるという感触を得ている。
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