2009 Fiscal Year Annual Research Report
パイロクロア酸化物超伝導体におけるラットリング転移の研究
Project/Area Number |
20540311
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山浦 淳一 The University of Tokyo, 物性研究所, 助教 (80292762)
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Keywords | 強相関電子系 / 物性実験 / 構造相転移 / フォノン / 超伝導 |
Research Abstract |
β型パイロクロア酸化物超伝導体KOs206は、"硬い"かご状構造の中で非調和的な熱振動(ラットリング)をしている稀有な系である。この物質における未知の相転移(ラットリング転移)のメカニズムに関して、多様な実験手段で明らかにしていくことを目的としている。2年目に当たる本年度は、ラットリング転移に関する非常に重要な知見が得られた。1つは、この転移が水に弱い転移のため、単結晶を2000個使用し、超高分解能中性子線回折の実験を行った結果、転移点において、極めて僅かな体積の増加を観測することに成功した。この実験を行うに際し、新たな単結晶大量合成法を開発した。また、この時、基本的な結晶構造が変化していないことも判明した。さらに、精密X線回折とNMR、比熱測定の組み合わせから、この転移がKのoff-centerに伴なうものではなく、大きなかごの中での異常熱振動状態が変化することによって起きる、同型構造相転移であることを明らかにした。これは、これまでにない全く新しいタイプの相転移であり、気液転移ともいえる状態であることが示唆される。さらに、これまでより大きな単結晶育成が可能になった結果、超音波分散の測定にも成功し、転移に伴なう異常を見出した。これらの結果について、学会発表、論文発表を行った。
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