2010 Fiscal Year Annual Research Report
パイロクロア酸化物超伝導体におけるラットリング転移の研究
Project/Area Number |
20540311
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山浦 淳一 東京大学, 物性研究所, 助教 (80292762)
|
Keywords | 強相関電子系 / 物性実験 / 構造相転移 / フォノン / 超伝導 |
Research Abstract |
β型パイロクロア酸化物超伝導体KOs206は、"硬い"かご状構造の中で非調和的な熱振動(ラットリング)をしている稀有な系である。この物質における未知の相転移(ラットリング転移)のメカニズムに関して、多様な実験手段で明らかにしていくことを目的としている。最終年度に当たる本年度は、ラットリング転移の起源に関する非常に重要な実験結果が得られた。1つは、高品質単結晶の合成に成功し、それを用いた精密単結晶構造解析と電子密度解析から、Kイオンの異常熱振動の方向が、転移高温側で111方向であったものから、-1-1-1方向へわずかに変化していることを見出した。また、詳細な比熱測定とNMRの測定を合わせて考えると、この異常熱振動状態は、かごの中で熱振動状態の変化する新しいタイプの相転移であることが判明した。また、この相転移は、空間群の変化しない、同型構造相転移でり、熱力学的に非常に稀有な例であるといえることも判明した。さらには、純度の高い粉末試料を用いた、Kサイトのイオン交換にも成功し、プロトン伝導体や氷の相転移の問題にも寄与できるような、制限空間水の新規合成にも成功した。これらの結果について、学会発表、論文発表を行った。
|