Research Abstract |
昨年度に,CdSe/ZnS半導体量子ドットにTiO_2ナノ粒子を添加すると,溶液状態での蛍光強度が減少するとともに,単一量子ドットのBlinking特性が大きく変化することを見いだした.今年度は,まずこの現象をより詳細に調べ,ナノ粒子による発光特性制御について研究を行った.単一量子ドットの蛍光寿命とBlinking特性を測定した.単一量子ドットを測定するため,化学結合でガラス基板表面に量子ドットを固定した.蛍光寿命測定では,TiO_2ナノ粒子添加の前後で蛍光寿命に大きな差は確認できなかった.Blinkingの計測では,計測開始60秒後にガラス基板上の対象としている単一量子ドットにTiO_2ナノ粒子溶液を滴下し,TiO_2ナノ粒子を近接させることによるBlinking特性の変化を観測した.Blinking特性変化として,TiO_2ナノ粒子近接により,(1)まったく発光しなくなる,(2)強度は弱くなるが発光している時間が増加する,(3)BlinkingのON時の強度が増加した後しだいに弱くなる,などを検出した.これらの変化は,Blinkingの原因として知られるオージェ過程が,TiO_2ナノ粒子への電子移動過程と競合する結果として理解できる.CdSe/ZnS量子ドットとTiO_2粒子の距離が大きい場合には(1)が,距離が近い場合には(2)が,距離が変化している場合には(3)が観測されると考えられる. 次に,本研究で目的とする高分子環境がCdSe/ZnS量子ドットの位相緩和に及ぼす影響を研究するため,量子ドット溶液の四光波混合実験を行った.購入した量子ドットの溶媒として,トルエン,クロロフォルムを用いたところ,四光波混合信号の時間波形が2つの溶媒で大きく変化することを見いだした.現在までの結果を公表すべく,国際会議に投稿中である.
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