2010 Fiscal Year Annual Research Report
量子ドット・ナノ物質系における近藤効果の理論的研究
Project/Area Number |
20540319
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
小栗 章 大阪市立大学, 大学院・理学研究科, 教授 (10204166)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西川 裕規 大阪市立大学, 大学院・理学研究科, 講師 (60373239)
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Keywords | 量子ドット / 近藤効果 / 強相関電子系 / 数値くりこみ群 / 超伝導 / アンドレーエフ散乱 / 非平衡電流 / ショット・ノイズ |
Research Abstract |
平成22年度は、(1)3角形3重量子ドット系の近藤効果、(2)超伝導体を含む3端子のリード線に接合された量子ドット系におけるAndreev・Josephson・近藤効果の競合、(3)軌道縮退のある量子ドット系の低エネルギー状態の性質、および非平衡定常状態におけるショットノイズ、完全計数統計と多方面から精力的に研究を進めた。既に発表した論文に加え現在さらに複数の論文を執筆中であり、今後、順次出版する予定である。以下、詳細を述べる。 (1) 3角形3重量子ドット系では、準位間を周回する軌道による量子干渉効果と電子相関の協演により、多彩な近藤効果が起ることを我々は以前から明らかにしてきた。今年度は正三角形構造からずれの効果を、占有電子数の異なる広いパラメータの範囲で調べ、この系の低温の振る舞いの全貌がほぼ明らかにした。特に、歪が大きい場合に長岡強磁性に基づくスピンS=1状態がS=0状態に転移点付近で電気伝導度が増加することなどを示した。 (2) 3端子の超伝導/量子ドット/常伝導の接合系の輸送特性を数値くりこみ群を用いて詳細に調べた。特に、低エネルギーの多彩な振る舞いが相互作用するBogolibov粒子系のFermi流体として統一的に理解できることを示した。また多体論に基づく解析的なアプローチから証明を与え、超伝導接合系の微視的局所Fermi流体論による定式化を行った。 (3) 今年度は軌道縮退のある量子ドット系の、局所Fermi流体状態の軌道依存性を精密に調べ、非平衡状態電流、ショットノイズ、完全計数統計における軌道の効果を電子間斥力Uが有限なAnderson模型系に対して明らかにした。また、数値的研究に加え、電子正孔対称な場合のUの4次まで摂動級数の解析的表式を得た。非平衡状態の強相関電子系に新しい知見を与えたものであり、量子輸送分野の発展に寄与するものと確信している。
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