2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20540320
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
石田 浩 日本大学, 文理学部, 教授 (60184537)
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Keywords | ヘテロ界面 / 金属絶縁体転移 / トンネル接合 / エムベッディッドGreen関数法 / 動的平均場理論 / 強相関物質 |
Research Abstract |
最終年度の平成23年度は、金属/Mott絶縁体界面の電子構造の計算を中心に研究を行った。ここで応用上重要な問題は、デバイスの絶縁体層をMott絶縁体で作成したとき、通常のバンド絶縁体と同様にデバイスが動作するかということである。密度汎関数法など一体近似の計算では、Mott絶縁体を記述できない。本研究では、動的平均場理論(DMFT)の範囲で強電子相関効果を扱い、金属表面に吸着したMott絶縁体単原子層の電子構造を調べた。これまで同様な計算は単一サイトDMFTを用いて行われ、金属に隣接した絶縁体層に近接(近藤)効果により低温で準粒子ピークが誘起され、絶縁体層がフェルミ液体になることが示された。本研究ではクラスターDMFTを用いることにより、絶縁体層内の隣接原子問の短距離電子相関の効果を取り入れた計算を行った。この際、絶縁体吸着層は正方格子の2次元ハバード模型を用い、下地金属には相互作用のない半無限強結合ハミルトニアンを用いた。我々の計算でもMott絶縁体層は下地金属との軌道混成により金属状態になる。しかし単一サイト近似とは異なり、クラスターDMFTでは絶縁体層のフェルミ準位付近にフェルミ液体を特徴づける準粒子ピークが生じなかった。面内原子間の強い相関効果により、吸着層は非フェルミ液体状態になる。つまりフェルミ準位付近の電子は有限の寿命を持ちその平均自由行程も短い。これはMott絶縁体をトンネル接合素子に用いると、バンド絶縁体の場合より大きなエネルギー損失が生じる可能性を示唆する。現在、この研究結果を論文にまとめている。本研究はドイツ・ユーリッヒ研究センターのLiebsch博士との共同研究により実施された。研究費は共同研究およびドレスデンでの国際会議での研究発表のため出張旅費及びPCクラスター設置用棚など物品費に用いた。
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