Research Abstract |
本年度は,第一原理によるポテンシャルパラメータを用いて,格子力学計算法により,CaWO_4結晶に関するフォノンの分散曲線解析を,高速計算機を使用して行った((1)).また,フォノンの分散曲線解析において,ラマン活性なフォノンの振動数の再現性も調べ,計算されたフォノンの状態密度より格子比熱計算を行い,広い温度領域において,ラマン活性なフォノンの振動モードについて詳しく調べた.次に,これらの計算結果を他のタングステン酸結晶(PbWO_4,BaWO_4)((2))やLiTaO_3結晶の場合((3))と比較・検討を行った.その結果,これらのタングステン酸結晶において,フォノンバンドギャップが存在し,BaWO_4結晶のフォノンバンドギャップが最も大きくなることがわかった.本研究プロジェクトで当初,ラマン分光実験で使用したBaWO_4サンプルは焼結体であったため,ロシア科学アカデミー・プロフォルフGPIのP.G.Zverev氏を研究協力者として,このプロジェクトに新たに加わっていただき,同氏より提供されたBaWO_4大型単結晶サンプルの高振動数の分子振動モードのラマンスペクトルデータに対するフォノンバンドギャップの非調和効果について再度調査した。その結果,フォノンバンドギャップ効果による低振動数と高振動数のラマンスペクトル幅の温度変化量の違いは十分認められるが,室温より高い温度領域における高振動数モードの再現性が若干,乏しいことがわかった.我々は4次の非調和効果(dephasing effect)による可能性を検討することにした((4)).これについては,Vibrational Spectroscopyに投稿する予定である.(1)と(3)についての研究結果は,国際会議(台湾大学)で発表し,その1部はChinese Journal of Physicsに掲載された.(2)についてはPbWO_4結晶を中心に,厳密な第一原理計算と本研究方法との計算結果を比較した.いずれの場合も低振動数の熱膨張異常モードは負のモードグリウナイゼン係数をもつことを報告した.これについては,日本分光学会年次大会で口頭発表を行った.(4)の研究結果については,国際会議(ボストン)にて報告した.
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