2011 Fiscal Year Annual Research Report
ナノスケールの遍歴電子磁性-電子移動を伴う光磁気特性の解明-
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20540327
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山本 昌司 北海道大学, 大学院・理学研究院, 教授 (90252551)
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Keywords | 光磁性体 / モリブデン錯体 / 光誘起相転移 / 磁化ダイナミクス / 群論 / 時間依存HF法 / 単分子磁石 / NMR |
Research Abstract |
研究最終年度を迎える中で、シアノ架橋銅モリブデン化合物Cu2[Mo(CN)8]の光誘起磁性解明に向けて、新規の理論研究を開始した。この物質は東大理・大越教授・錯体化学研究室の手になるものであり、波長の違う可視光を照射することにより、オン・オフ可逆の光誘起磁性体であることが知られている。しかし、その磁化増幅・減衰機構について、一切の物理的・微視的解釈は得られておらず、トライ・アンド・エラーの物質合成研究が先行するのみである。昨年度まで1次元玩具模型を用いた助走研究を進めてきたが、光照射による磁化発現を定性的に確認できたものの、磁化立ち上がり時間、誘起磁化量、双方向スウィッチング等、1次元の範囲内では定性定量的に再現できない現実も明らかになった。そこで物質の結晶構造を精確に反映する、群解析、基底状態相図、光誘起磁化ダイナミクスという一連の理論研究を企画した。当該8配位モリブデン錯体は四方逆プリズム型でD4d対称性をもつが、その集合体である銅モリブデン化合物の対称性はC4hである。錯イオン単体では複数回転軸をもつ一方、反転対称性が無い。化合物としては、回転対象性は単一軸に低下するが反転対称性をもつようになる。モリブデンを解したd電子ホッピングは螺旋的"捩れた"パスを取ることになり、これが遍歴性に重要な影響を及ぼす。群解析により、3種類の磁性不変部分群、数値的に4種類の異なる磁性相が得られた。これと常磁性無秩序相が競合する興味深い相図が得られた。CuをFeに置換した類似物質も存在し、両者は光活性/不活性と性質を異にする。これはd電子バンド・フィリングの違いからくるものと思われ、現在対応する数値計算を急いでいる。基底状態相図完成の暁には、時間依存ハートリィ・フォック法を用いて、磁化ダイナミクスの計算に歩を進める。これは萌芽的新たな研究課題であり、新規基盤研究を申請している。
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Research Products
(3 results)