2010 Fiscal Year Annual Research Report
圧力下ミュオンスピン回転緩和法による強相関有機物質の磁性研究
Project/Area Number |
20540345
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
佐藤 一彦 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (60225927)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷口 弘三 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (50323374)
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Keywords | 有機物質 / ミュオンスピン回転・緩和法 / 強相関電子系 / 高圧 |
Research Abstract |
22年度はD8-κ-(BEDT-TTF)_2Cu[N(CN)_2Br(D8-κ-Brと略記)についてμSR実験を行った。κ-BrはBEDT-TTF系では常圧で最も高い転移温度を持つ有機超伝導体であるが、BEDT-TTF分子の外側にある4つの炭素についている計8つの水素を重水素に置換したD8-κ-BrはMott転移のごく近傍に位置し、反強磁性絶縁相と超伝導相が相分離を起こしていると考えられている。また、試料の冷却速度を速めることにより超伝導の体積比を減少させることが可能である。D8-κ-BrはMott転移を研究する上で最適な物質と考え、μSRにより磁性と超伝導の競合(もしくは共存)を調べるた。実験は英国理研RALミュオン施設にて行った。急冷・徐冷いずれ場合においてもμSRスペクトルに急激な緩和と小さな回転が確認でき、反強磁性秩序をμSRで捕らえることができた。また、冷却速度を上げることにより緩和率が増大することも分かった。今後は急冷によるdisorderの効果、類似物質κ-(BEDT-TTF)_2Cu[N(CN)_2]Clとの比較などを行いMott転移近傍の状態を明らかにしたい。 また、23年度はNiCrAl合金を用いた圧力容器の作成を行った。本容器ではこれまでの容器に較べて壁の厚みをやや薄くすることにより、発生最高圧力は1GPa程度と低めではあるが、よりSN比の高い測定が可能になることを目指したものである。今後本容器の性能試験を大強度陽子加速器施設にて行う予定である。
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