2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20540346
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宮川 和也 The University of Tokyo, 大学院・工学系研究科, 助教 (90302760)
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Keywords | ゼロギャップ伝導体 / 有機導体 / 核磁気共鳴法 |
Research Abstract |
本研究課題では有機導体で実現されたゼロギャップ伝導体を中心にその周辺物性も含めた電子状態の解明を目指している。ゼロギャップ状態が実現されている単層グラファイト(グラフェン)と異なり、有機導体αおよびθ-(BEDT-TTF)2I3塩では圧力をパラメーターとしてゼロギャップ状態だけでなく、金属(超伝導)、電荷秩序絶縁相など多彩な電子状態が出現する。これらの電子相の性質を明らかにし、さらに各電子相がどのように関連しているのかを調べていく上で、圧力をパラメータとして系統的な実験を行い、その結果を定量的に評価する必要がある。グラフェンでは大量の試料合成が難しいことから磁性の側面のアプローチは少ない。有機導体はバルクの試料を得る事ができる。加えて有機導体におけるゼロギャップ状態では電荷の不均化との関連が指摘されていることから、微視的プローブでかつ物質の磁性を測定可能な核磁気共鳴(NMR)は本課題の遂行に欠かすことのできないものである。 研究課題初年度である平成20年度はまず、常圧下で金属(超伝導)であるθ-(BEDT-TTF)2I3の13C NMR測定を行い、超微細結合定数などのNMRデータ解析の基本となるパラメーターの決定を行った。この結果から、常圧下でのθ-(BEDT-TTf)2I3は電子相関の弱い金属であることがわかった。 加えて、同じ、θ型塩で電可不均化をおこす(BEDT-TTF)2CsZn(SCN)4塩において強電場パルスによる電気抵抗とNMRの同時測定を試みた。これによって電気抵抗とNMRデータという電荷とスピン自由度の情報を同時に得る事が可能となったが一方で、同時測定を行う際のNMR信号へのノイズの増大が認められるなど同時測定における課題も浮き彫りにした。
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Research Products
(5 results)