2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20540346
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宮川 和也 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助教 (90302760)
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Keywords | ゼロギャップ伝導体 / 電荷不均化 / 電荷秩序 / 有機導体 / 核磁気共鳴法 / 磁性 |
Research Abstract |
本研究課題では有機導体で実現されているゼロギャップ状態およびその近傍での物性を対象にしている。有機導体はバルク結晶であるためグラフェンなどの他のゼロギャップ系物質と異なり磁気的性質の測定が可能となる。有機導体α-(BEDT-TTF)_2I_3塩は常圧では電荷秩序転移によって絶縁化するが、加圧することによって転移が押さえられゼロギャップ状態が実現する。研究最終年度となる本年はゼロギャップ状態の磁性を詳細に調べるため加圧下(20kbar以上)においてα-(BEDT-TTF)_2I_3、塩の^<13>C核の核磁気共鳴実験(NMR)を行った。この結果、スピン-格子緩和率、ナイトシフトともに前年度報告した、同じく加圧下でゼロギャップ状態になるθ-(BEDT-TTF)_2I_3塩(この物質は常圧下では金属であり5kbar以上でゼロギャップ状態となる)と同様にゼロギャップ状態として理解できる温度依存性を示す温度域があることを観測した。試料を磁場中で回転させNMR測定することにより、単位格子中に含まれる、非等価な3つのBEDT-TTF分子の温度依存性を独立に求めた。3つの分子のナイトシフトの温度依存性およびサイト依存性はディラックコーンが傾いていることと矛盾しない振る舞いであることを明らかにした。これらに加えて、単純なゼロギャップ状態で期待される温度依存性とは異なる振る舞いが低温域と高温域において観測され、今後に向けての新しい課題を見出すことになった。
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Research Products
(4 results)